中耳炎

急性中耳炎

中耳炎の治療で悩んでいませんか?

急性中耳炎はこどもに多い病気で、38~40度の発熱と激しい耳の痛みがあります。その治療として鼓膜を切って膿を出す方法があります。膿を出すと大抵その日のうちに熱が下がり、痛みも取れます。

私も開業当初はその方法がベストと思い、それ以外の方法は考えられませんでした。

何人もの患者さんを診察していくうちに、ねばった鼻水をやわらげるお薬と抗生剤を処方し、痛みに対しては座薬や痛み止めの飲み薬を処方することで、その日のうちに熱が下がり、痛みも取れることが分かりました。

それ以来、急性中耳炎に対して鼓膜切開はしなくなりました。

切開をした場合、翌日から黄色い膿が大量に耳から出ます。いかにも悪いものが出てきた感じがしますが、かえってその耳だれ(膿)が長引き、そのため抗生剤を長期間服用しなければいけない場合が多く見られます。
耳だれが止まり、鼓膜は閉じますが、さらにその膿が中耳に残る場合もよくあります。いわゆる急性中耳炎から移行した滲出性中耳炎の状態です。

滲出性中耳炎は鼻づまりなどが続くと、中耳にさらさらの水が溜まる状態です。発熱や痛みはありませんが、たまった水(滲出液)のために聞こえが悪くなります。滲出性中耳炎に対しても、当初は鼓膜切開をしていました。

ただ、真面目に通院されない方が何ヶ月かして来院され、鼓膜を見てみるとすっかりきれいに良くなっている場合がよくありました。

そのため、最初は水がたまって1週間したら切開していたのを、2週間、1ヶ月、3ヶ月とどんどん伸ばしていきました。すると、自然に良くなる人が増えていったのです。

それからは滲出性中耳炎に対しても鼓膜切開は行っていません。

急性中耳炎も滲出性中耳炎も、ほとんどが小学校に上がるまでの病気です。それまでを上手く付き合って行けば、耳鼻咽喉科に通院する必要もそれほどなく、薬を長期間にわたって飲むこともなくなります。

ただし難聴がひどく、発育に影響を及ぼしたり集団生活で困る場合には、鼓膜にチューブを入れる方法を取ります。外来で鼓膜に麻酔液を置き、顕微鏡下で行える処置です。この処置は、急性中耳炎を繰り返し、延々と抗生剤を飲まないといけない場合や、熱のたびに保育園や幼稚園を休まなければならない場合にも行います。

チューブを入れている間は、中耳炎にならないわけですから、聞こえも保たれ、急性中耳炎によって熱が出ることもなくなります。また長期間の薬の服用をする必要がなくなります。
いずれにしても、こどもさんが負担にならない治療を第一に優先すべきだと考えて、治療を行っています。

急性中耳炎のよくある症状

乳幼児の場合
急に(特に夜中が多い)耳を痛がり、泣き出します。
乳児の場合はどこが痛いか言えないので、熱が出るとともに機嫌が悪くなります。
大人の場合
鼻を強くかんだり、吸い込んだりしたあと、耳が痛くなります。
鼓膜が破れると耳だれ(黄色い膿)が出てきます。

急性中耳炎の原因

耳(中耳)と鼻の奥は、くだ(耳管)で繋がっています。風邪をひいたときなどに、ばい菌が鼻から耳に行き急性中耳炎になります。
乳幼児はくだが大人よりも太く、短く、水平になっています。耳にばい菌が行きやすい構造になっています。

急性中耳炎

顕微鏡による検査

中耳炎の丁寧な診断は肉眼ではできません。
そのため、当院では手術用の顕微鏡を使い、診断を行っています。

顕微鏡の画像はモニターに映し出されます。ご本人や保護者の方は、モニターを見ながら説明を受けることが可能です。

乳幼児の聴力を多角的に調べることのできる 耳音響放射検査(DPOAE)を導入し、難聴の発見に役立てています。小さなプローブを耳にいれ、数秒で検査出来ます。

急性中耳炎の治療法

急性中耳炎の治療法には、薬を使っての治療と、鼓膜を切って膿を出す方法があります。

痛みと熱を引かせるためであれば、抗生剤が良く効きます。当院ではほぼ全例、薬だけで治療しています。
ただし、抗生剤を使いすぎると薬が効かない菌に変わることがあります。治療が長引く例があるため、注意が必要です。

3歳未満で保育園など集団生活をされているこどもさんは、感染の機会にさらされています。そのため、何度も中耳炎をくり返します。
そういう方には鼓膜にチューブを入れて、中耳炎による発熱や痛みを起こさせない治療をします。

滲出性中耳炎

滲出性中耳炎のよくある症状

小学校に上がるまでのこどもによく見られますが、痛みなどないため気づかれにくい場合が多いです。
聞こえが悪いので分かる場合が多いです。

滲出性中耳炎の原因

アデノイドや鼻の病気があったりして、耳に空気が行きにくいことが原因となります。

滲出性中耳炎の検査法

手術用顕微鏡を用いた検査風景

手術用の顕微鏡を用いて診断を行います。

また、鼓膜の振動を調べる検査、ティンパノメトリーも用います。

乳幼児の聴力を調べることのできる 耳音響放射検査(DPOAE)を導入し、難聴の発見に役立てています。小さなプローブを耳にいれ、数秒で検査出来ます。

滲出性中耳炎の治療法

自然治癒が多いので、必要なときだけのみ薬を使い、あとは経過を見るだけにしています。滲出液が溜まっているだけでは鼓膜切開は行いません。

ただし、日常生活で聴力が悪く不自由する場合には、鼓膜にチューブを入れて治療する方法も選択肢にいれ、症状に合わせた方法を取っていきます。